空調業者は、設備業者のひとつです。建物にエアコンが必要なことは多いですが、建物をつくるときに、電気や給排水のように最初から工事の流れに組み込まれる設備とは少し違うところがあります。
空調機は、室内機と室外機を別々の場所に設置し、その間を冷媒配管でつなぎます。室内機は部屋の中、室外機は建物の外。建物のあちこちにある室内機から、外に置かれた室外機まで配管を通さなければなりません。
この「室内と屋外に分かれた機器を、建物の中を通る配管でつなぐ」というところが、空調業者の仕事を少し特殊にしていると思います。
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空調は建物ができてからでも設置できる設備
電気配線や給排水の配管は、壁や床、天井の中に隠れるものが多く、建物をつくる段階で通り道を決めておく必要があります。もちろん、後から工事できる場合もありますが、仕上がった壁や床を開けることになれば大変です。
一方、空調の冷媒配管は、建物の状況によっては後から設置できることがあります。だからといって簡単という意味ではありません。配管の通り道や室外機の置き場所を考え、室内機のある場所までつなぐ必要があります。新築でも改修でも、建物の構造や仕上がりによって工事のやりやすさは変わります。
給湯器なら、一般的には屋外などに本体を設置し、ガスや給水・給湯の配管を接続します。空調機のように、複数の部屋に置いた室内機を屋外の室外機につないでいく形とは、仕事の組み立てが違います。
工事のタイミングが一度ではない
空調工事は、建物ができあがる最後の方に室内機を取り付けることが多い仕事です。ただし、配管は天井を張る前に施工することがあります。天井裏に冷媒配管やドレン配管を通しておき、天井ができてから室内機を取り付ける、といった具合です。
つまり、空調業者は一度現場に入って終わりとは限りません。天井の下地ができた段階で配管を仕込み、別の工事が進んだあとに、仕上がった天井へ室内機を付ける。建物の工程に合わせて、工事を分けて進めることがあります。
天井を張る業者、電気業者、現場を管理する人たちとの調整も必要です。どこに配管を通すのか、どのタイミングで天井を閉じるのか。周りの工事と順番が合わなければ、作業が止まってしまいます。
天井裏に入る前に、声をかけてほしい
困るのは、まだ配管を天井裏に通していないのに、天井を張られてしまうような状況です。天井ができてからでは、配管を通すために天井を開けたり、別のルートを考えたりしなければならないことがあります。
もちろん、現場の職人さん全員が意地悪なわけではありません。いろいろな工事が同時に進んでいて、連絡が行き違うこともあります。それでも、空調業者としては「まだ天井裏の作業が残っています」と周りに伝え、天井を閉じるタイミングを確認しておく必要があります。
自分の作業だけを黙々とやっていれば済む仕事ではありません。周囲の進み具合を見て、必要な人に声をかけ、次に何が起きるかを考えながら動く。こういうところも空調業者の大変さです。
職人気質だけではやっていけない「職人営業」
空調業者というと、配管をつないで機械を取り付ける職人仕事を思い浮かべるかもしれません。もちろん技術は必要です。でも、現場では技術だけでは足りません。
天井業者や電気業者に作業の予定を伝えたり、現場監督に配管のルートを相談したり、工程が変わったときに調整したりします。相手の工事を邪魔せず、自分たちの作業に必要な場所と時間を確保する。周りに気を使いながら仕事を進める必要があります。
だから私は、空調業者は職人気質だけではなく、ちょっと「職人営業」のようなところがあると思っています。手を動かすだけでなく、現場の人たちと話して段取りをつける仕事でもあるのです。
天井裏に忘れ物をするのも、空調屋らしさ?
空調の入れ替え工事では、天井裏にドライバーやスケールを忘れてきてしまうことがあります。天井裏は普段見えない場所です。配管を確認したり、機器を取り付けたりしているうちに、工具を置いたままにしてしまう。空調屋ならではの忘れ物だなと思います。
工具を忘れないようにするのも、もちろん仕事のうちです。それでも、天井裏という独特の場所で作業するからこそ起きる失敗があります。現場で周りに気を配り、工程を調整し、最後は工具まで確認する。空調業者はなかなか気の抜けない仕事です。
空調業者は建物の完成を裏側から支える
空調業者は、建物をつくるうえで必ず最初に必要な業者というわけではないかもしれません。それでも、建物の中のいろいろな部屋に室内機を設置し、屋外の室外機とつなぎ、天井や他の設備との取り合いを調整します。
工事のタイミングは現場の後半に見えても、配管の段取りは天井を張る前から始まっています。周りの業者に気を使い、声をかけ、職人として作業しながら営業のように調整もする。そんな少し特殊な仕事が、空調業者なのだと思います。
