
古い水冷式業務用エアコンの故障や老朽化で、「次も同じ方式にできるのか」「空冷式へ入れ替えるには何が必要か」と困っていませんか。
既設機に合う水冷式の後継機が見つからない場合や、冷却塔・ポンプもまとめて見直す場合は、空冷式への入れ替えが有力な選択肢です。 ただし、室外機の設置場所と配管ルートを確保できることが前提になります。
この記事では、学生にもイメージしやすい「熱の引っ越し」を使って両方式の仕組みを説明し、空冷式への更新を中心に、現地調査で確認したい点を紹介します。
目次
水冷式はもう作られていない?まずは機種ごとの確認が必要
「今ある水冷式の機種が生産終了している」ことと、「すべての水冷式エアコンが製造終了している」ことは別です。2026年10月1日の確認時点で、三菱電機の公式サイトには水冷式パッケージエアコンが掲載され、ダイキンアプライドシステムズにも受注生産品の案内があります。
一方、製品ページがあるだけで、既設機と同じ能力・寸法・接続条件の機種をすぐに入手できるとは限りません。型式をメーカーや販売施工店へ伝え、受注可否、納期、保守部品、設置条件を確認しましょう。
そのうえで、室外機を設置でき、建物側の条件も満たすなら、空冷式への変更を検討します。本記事は、この入れ替えを進めるための確認事項を中心に解説します。
まず共通の仕組み:エアコンは「熱の引っ越し」をする機械
冷房は、部屋にたまった熱を外へ運び出すことで室温を下げます。冷たい空気を無限に作る箱というより、熱を別の場所へ運ぶ機械だと考えると分かりやすくなります。
熱を運ぶ役目をするのが「冷媒(れいばい)」です。冷媒は機械の中を循環し、熱を受け取ったり手放したりします。その通り道には、熱を受け渡す「熱交換器」と、冷媒を圧縮して温度・圧力を高める「圧縮機」があります。
たとえば、教室の熱を荷物に見立てると、冷媒はその荷物を運ぶ係です。水冷式と空冷式の大きな違いは、運んできた熱を、水に渡すか、外の空気に渡すかという点です。ここからは冷房運転を例に見ていきましょう。
水冷式業務用エアコンの仕組みをやさしく説明
水冷式パッケージエアコンは、冷媒が集めた部屋の熱を「冷却水」に渡します。代表的な冷却塔を使う設備では、温まった水をポンプで循環させ、屋外の冷却塔(クーリングタワー)で熱を逃がします。
熱の流れ:部屋 → 冷媒 → 冷却水 → 冷却塔 → 外の空気
冷媒が運んだ荷物を、水という別の運び手へ渡す「熱のリレー」を想像してください。冷却塔は、水が受け取った熱を外へ逃がす場所です。一般的な蒸発式の冷却塔では、水の一部が蒸発するときに熱を奪う働きも利用します。
水冷式パッケージには、圧縮機などを室内側の機器にまとめた一体形があります。この場合、空冷式のような室外機を各部屋・店舗ごとに置かずに済みますが、建物側には冷却水を循環させ、熱を処理する設備が必要です。
「水冷式だから冷媒を使わない」わけではない
水冷式パッケージにも冷媒回路があります。水は冷媒から熱を受け取る側で、通常、冷媒と水が混ざるわけではありません。また、冷却水をそのまま室内へ吹き出したり、室内にまいたりする仕組みでもありません。
「ファンコイルユニット」とも区別しましょう。一般的なファンコイルは、別の熱源機で作った冷水・温水を受け取り、風を通して部屋を冷暖房する機器です。水冷式パッケージと同じものではありません。詳しくはファンコイルユニットとは?仕組み・特徴・メリットとデメリットを徹底解説を参照してください。
空冷式業務用エアコンの仕組みをやさしく説明
店舗や事務所でよく見かける、室内機と室外機がセットになったエアコンを考えてみましょう。室内機で集めた熱を冷媒が室外機へ運び、室外機の熱交換器とファンを使って外の空気へ渡します。
熱の流れ:部屋 → 冷媒 → 室外機 → 外の空気
水冷式との違いは、この熱の運搬に冷却水を挟まないことです。通常の空冷式パッケージでは、放熱のための冷却塔や冷却水ポンプを必要としません。冷房中に室外機から温かい風が出るのは、室内から集めた熱などを外へ逃がしているためです。
冷媒は圧縮機で圧力・温度を高めて熱を放出し、その後、膨張弁などで圧力を下げ、再び室内の熱を受け取れる状態になります。これを繰り返して冷房します。
暖房ができるヒートポンプ式では、熱の移動方向を切り替え、外の空気から熱を集めて室内へ運びます。水冷式の暖房は、水側の熱源や補助ヒーターなど機種・設備によって異なるため、現在の暖房方式も調査が必要です。
空冷式でも排水は必要
「冷却水が不要」と「水が一切出ない」は違います。冷房中は、室内機で空気中の水分が結露するため、ドレンと呼ばれる排水の経路が必要です。暖房中は室外機の霜取りで水が出る場合もあります。
水冷式業務用エアコンはどのような場合に採用される?
地下街や大型ビルなど、室外機と冷媒配管の設置が難しい場合
地下の店舗から屋外まで遠い、屋上の室外機置場が足りない、といった建物では、空冷式の設置が難しくなることがあります。利用できる冷却水設備があれば、水冷式を検討できます。
三菱電機は、地下街や高層ビルなど、室外機スペースや冷媒配管長が制約になる場所を採用先として案内しています。水冷式も無条件にどこへでも設置できるわけではなく、水圧・流量・水温・ポンプ能力などの設計確認が必要です。
建物の共用設備を使いながら、店舗ごとに運転したい場合
大規模商業施設などで、共用の冷却水配管を利用しながら店舗ごとの個別空調を行う場合です。飲食店や厨房など、周囲の店舗と営業時間が違ったり、冬も冷房が必要だったりする場所が例になります。
ただし、個別にスイッチを入れられても、必要な時間に建物側から所定の水温・水量が供給されなければ運転できません。営業時間外や冬季の運用は管理会社へ確認します。
既存の水設備を生かして更新する場合
冷却塔・ポンプ・水配管が健全で、水冷式の適合機も手配できるなら、既設設備を使う更新案も比較対象です。逆に、それらの設備が同時に更新時期を迎えているなら、空冷式へ切り替える案の費用と維持管理を検討する価値があります。
水冷式が採用されている理由を確かめることが、入れ替え計画の出発点です。「古い方式だから」という理由だけで変更すると、以前からあった設置上の制約にぶつかることがあります。
水冷式から空冷式へ入れ替えるときの確認点
1.室外機を置き、熱を逃がせる場所があるか
空冷式への変更では、室外機の設置場所を新たに確保することがあります。本体が収まる寸法だけでなく、吸込み・吹出しの空間、点検スペース、重量に耐える構造、騒音・振動、隣地への排熱も確認します。
狭い場所に押し込むと、吹き出した熱い空気を再び吸い込むことがあります。屋上に置く場合は、搬入・揚重、架台、防水との取り合いも見積もりに含めてもらいましょう。
2.新しい冷媒配管のルートを確保できるか
水冷式で使っていた水配管を、そのまま空冷式の冷媒配管として使えるとは考えないでください。流す物質、材質、必要な耐圧、管径、清浄度などの条件が異なります。一般的な一体形水冷式からの変更では、室内機と室外機を結ぶ冷媒配管を新設する計画になります。
配管の長さと高低差は、選定機種の制限内かを確認します。壁の穴あけ、天井の開口・復旧、共用部の通過、断熱や結露対策なども工事範囲に入ります。既存の冷媒配管が別にある場合も、再利用の可否はメーカー条件と現物調査で判断します。
3.必要能力・風の届け方・電源を見直す
同じ馬力表示だけで機器を選ばず、必要な冷暖房能力をkWで確認します。床面積に加え、窓、人数、厨房機器、換気量、営業時間が選定に影響します。馬力とkWの考え方も参考にしてください。
ダクトを使う設備なら、新しい機器の風量と、ダクトへ風を送り込む力が合うかも確認が必要です。設備用エアコンのダクト形と直吹形の違いを知っておくと、提案の違いを理解しやすくなります。
電源を供給する場所や配線方法も変わることがあります。既設のブレーカー・ケーブルを使えるかは施工店に確認してもらい、排水経路、リモコン、集中管理との接続も合わせて調査します。
4.冷却塔・ポンプ・水配管をどこまで撤去できるか
一台を空冷式へ替えても、ほかの空調機や設備が同じ冷却塔を使っていれば、冷却塔全体は撤去できません。専用設備か共用設備か、どこまで切り離せるかを図面と現地で確認します。
残す系統がある場合は、切り離し後も必要な水量や運転条件を保てるよう、設備担当者が計画します。テナントの判断だけで共用バルブを閉めたり、水配管を外したりしてはいけません。
5.空調が使えない時間と建物側の承認を確認する
工事中にどの範囲の空調が何時間・何日使えなくなるか、営業を続けられるかを事前に確認しましょう。搬入経路や夜間工事の制限がある建物では、管理会社との調整も必要です。
配管貫通、天井内工事、共用部使用などの条件を整理し、仮設空調の必要性も検討します。工期は機器の納期と現場条件で変わるため、一律には決められません。
入れ替え費用は「本体価格」より工事範囲をそろえて比較
水冷式から空冷式への更新は、同じ方式の単純な交換より工事範囲が広がる場合があります。見積もりでは、次の項目を分けて確認すると比較しやすくなります。
- 新しい室内機・室外機・リモコンの費用
- 冷媒配管、ドレン配管、電源・制御配線の工事
- 室外機の架台、搬入・揚重、騒音・振動への対策
- 天井・壁の開口と復旧、ダクトの改修
- 既設機の撤去、冷媒回収、運搬・処分
- 不要になる水配管・ポンプ・冷却塔の切り離しや撤去
- 試運転、管理会社との調整、必要に応じた仮設空調
「一式」の見積もりでも、何が含まれ、何が別途なのかを明確にしてもらいましょう。具体的な見方は業務用エアコンの見積書の見方で紹介しています。
維持費はエアコン本体以外も含める
比較するのは電気代だけではありません。水冷式では冷却塔やポンプの電力、補給水、水処理・清掃・点検なども含めます。空冷式でも機器の保守は必要で、使い方や外気条件によって消費電力は変わります。
共用冷却塔を残す場合は、維持費が丸ごとなくなるとは限りません。「必ず何%安くなる」と決めつけず、実際に不要になる費用と、更新後に発生する費用を同じ期間で比べてください。
古い機器の冷媒回収も工事に含める
フロン類を使用する業務用エアコンを廃棄するときは、フロン排出抑制法に基づく回収・引渡しなどの手続が必要です。水冷式でも冷媒を使うパッケージエアコンは対象になり得ます。登録を受けた第一種フロン類充塡回収業者への依頼と、引取証明書などの書類の扱いを施工店へ確認しましょう。
見積もりを依頼する前にそろえておきたい情報
- 既設機のメーカー・型式・台数・設置年(分かる範囲)
- 設備図面、過去の修理履歴、現在の不具合
- 冷却塔・ポンプが専用か共用か、管理会社の連絡先
- 部屋の用途、面積、営業時間、冬の冷房や暖房の必要性
- 室外機を置けそうな場所と搬入経路
- 希望する更新時期と、空調を止められる日程
写真は床面など安全な場所から撮れる範囲で十分です。銘板を見るために高所へ上ったり、機器のカバーを外したりせず、確認が難しい箇所は現地調査を依頼してください。
よくある質問
水冷式から空冷式には必ず入れ替えできますか?
室外機の設置場所、冷媒配管の長さ・高低差、電源、管理規約などによります。地下街などでは空冷式への変更が難しく、水冷式の更新を検討することもあります。
今の水冷式エアコンに室外機だけ追加できますか?
一般的な更新では、水冷式機器に空冷式の室外機を足すだけで済むものではありません。メーカーが認める組合せの新しいシステムとして計画します。既設のダクトなどを残せるかは別途調査します。
水冷式なら冷却塔は必ず必要ですか?
水冷式には、水が受け取った熱を処理する仕組みが必要です。建物では冷却塔を使う構成が代表的ですが、設備によって水の供給方法や熱源構成が異なります。本記事の説明は冷却塔を使う代表例です。
空冷式に替えれば水道代や保守費はゼロになりますか?
専用の冷却水設備を廃止できれば、その補給水や維持管理の負担を減らせます。ただし、共用設備の負担が残る場合があり、空冷式エアコン自体の点検・清掃も必要です。
まだ動いているうちに相談した方がよいですか?
はい。方式変更では設置場所の確認、管理会社との調整、機器の手配が必要です。故障してから急いで決めるより、運転できるうちに現地調査と更新案の比較を進めると、営業への影響を計画しやすくなります。
まとめ
水冷式は冷媒から水へ、空冷式は冷媒から屋外の空気へ熱を渡して冷房します。水冷式は、室外機を置きにくい地下街や、既存の冷却水設備を使える大型ビルなどで採用されます。
水冷式業務用エアコンの入れ替えでは、適合する後継機の有無を確認しつつ、空冷式への更新を検討しましょう。判断の要は、室外機の置場、冷媒配管の経路、電源・排水、共用設備への影響、工事と維持管理の総費用です。機器だけの交換として考えず、水設備を含めた現地調査から始めてください。
参考情報
メーカーの掲載情報は2026年10月1日に確認しました。製品の受注可否・納期や施工条件は、発注時にメーカー・販売施工店へ確認してください。
