
「3馬力の業務用エアコンがほしい」と相談されたとき、すぐに機種を決めてはいけません。店舗・オフィス用エアコンとビル用マルチエアコンでは、同じ3馬力でも能力表示の基準や、カタログ上の馬力区分が異なる場合があるためです。
結論から言うと、馬力は機種を探すための目安、kWは必要能力を確認するための数値です。店舗・オフィス用では暖房能力、ビル用マルチでは冷房能力を中心に仕様を確認し、最後は建物の負荷に合うkWで選定します。
目次
3馬力は何kWなのか
業務用エアコンの「3馬力」は、実際のモーター出力が3馬力という意味ではありません。空調業界で能力クラスを分かりやすく示すための、業務用エアコン特有の呼び方です。
代表的な店舗・オフィス用エアコンでは、3馬力相当はP80形と呼ばれ、暖房定格能力が約8.0kWの機種が目安になります。冷房最大能力も8.0kWと表示される機種がありますが、冷房最大能力と暖房定格能力は同じ意味ではありません。
店舗・オフィス用は暖房能力を重視する
店舗・オフィス用は、1台の室外機と室内機で店舗や事務所を冷暖房する機器です。出入口の開閉が多い店舗、大きな窓がある場所、天井が高い建物、断熱性の低い建物、寒冷地では、冬に必要な暖房能力を重視します。
| 馬力相当 | 形式の目安 | 暖房定格能力の目安 |
|---|---|---|
| 3馬力 | P80形 | 約8.0kW |
| 4馬力 | P112形 | 約11.2kW |
| 5馬力 | P140形 | 約14.0kW |
| 6馬力 | P160形 | 約16.0kW |
この表は代表的な能力対応です。メーカーやシリーズによって定格・最大・低外気時の能力は変わるため、馬力やP形だけでなく暖房仕様を確認してください。
ビル用マルチは冷房能力を中心に見る
ビル用マルチエアコンは、室外機に複数の室内機を接続して使用するシステムです。室内機ごとに運転や温度設定を分けられるため、オフィスビルやテナントビルに向いています。
ビル用マルチの室外機容量やシステム容量は、冷房能力を基準に整理されることが多く、冷房能力8.0kWが一つの目安になります。ただし、カタログに「3馬力」がなく、2.8馬力相当の次が3.2馬力相当となるシリーズもあります。
なぜ同じ8.0kWでも馬力が変わるのか
- 店舗・オフィス用とビル用マルチで、基準にする運転が違う
- 定格能力、最大能力、低外気時能力など、数値の種類が違う
- メーカーやシリーズによって馬力区分が違う
そのため、店舗・オフィス用の3馬力相当を、そのままビル用マルチの3馬力へ置き換えることはできません。
「3馬力」と言われたらどちらを選ぶか
店舗・オフィス用の場合
店舗・オフィス用として新設・更新するなら、3馬力相当、P80形を入口に検討します。そのうえで、暖房定格能力が必要な暖房負荷を満たしているか、寒いときの能力が不足しないかを確認します。
ビル用マルチの場合
ビル用マルチでは、「3馬力」という言葉をそのまま機種名に変換しません。必要な冷房能力と接続する室内機の合計容量を確認し、カタログ上の2.8馬力相当または3.2馬力相当などから選びます。
必要能力が2.8馬力相当の範囲内なら2.8馬力相当、2.8馬力を超える場合は3.2馬力相当を検討します。ただし、能力が大きすぎると、初期費用や温度ムラに影響することがあるため、単純に大きい機種を選べばよいわけではありません。
馬力とkW、どちらを基準にすればよいか
実務では、まず店舗・オフィス用かビル用マルチかを確認します。次に、店舗・オフィス用なら暖房負荷、ビル用マルチなら冷房負荷を確認し、必要能力をkWで把握します。最後に、そのkWを満たす機種の馬力・形式をカタログから選びます。
馬力は検索や見積もりの会話では便利ですが、最終判断には向きません。業務用エアコンが冷えない場合も、能力不足と決めつけず、フィルターや室外機周辺などを確認してください。詳しくは業務用エアコンが冷えない原因も参考になります。
既存機器の更新では種類を確認する
既存の店舗・オフィス用をビル用マルチへ、またはビル用マルチを店舗・オフィス用へ変更する場合は、能力だけでなく、冷媒配管、電源、室内機の接続方式、制御方法も確認が必要です。同じ馬力表示だから交換できるとは限りません。
よくある質問
3馬力は必ず8.0kWですか?
必ずではありません。メーカー、シリーズ、冷房・暖房のどの能力を見るかによって数値が変わります。3馬力相当の目安として8.0kWが使われることはありますが、仕様表の確認が必要です。
店舗用の3馬力とビル用マルチの3馬力は同じですか?
同じとは限りません。店舗・オフィス用では暖房能力、ビル用マルチでは冷房能力を中心に整理するなど、基準が異なる場合があります。
ビル用マルチで2.8馬力と3.2馬力ならどちらを選びますか?
必要能力が2.8馬力相当以内なら2.8馬力相当、超える場合は3.2馬力相当を検討します。最終的には冷房負荷計算と室内機の組み合わせで決めます。
まとめ
業務用エアコンの「3馬力」は、店舗・オフィス用とビル用マルチで同じ意味になるとは限りません。店舗・オフィス用では3馬力相当のP80形を入口に、暖房定格能力約8.0kWを確認します。ビル用マルチでは冷房能力を基準に、メーカーの能力区分や室内機の接続条件を確認します。
馬力・P形は機種を探すための表示、kWは必要な能力を確かめるための表示です。「3馬力」と言われたときは、まずエアコンの種類を確認し、必要能力をkWに置き換えてから機種を選びましょう。
